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大阪高等裁判所 平成9年(ネ)828号 判決 1998年2月13日

呼称

控訴人(原審第一事件・第二事件・第三事件原告)

氏名又は名称

アサヒ軽金属工業株式会社

住所又は居所

大阪府大阪市中央区瓦町一丁目四番一六号

代理人弁護士

木内道祥

代理人弁護士

谷池洋

呼称

被控訴人(原審第一事件被告)

氏名又は名称

昭和有機株式会社

住所又は居所

東京都中央区銀座五丁目一三番一六号

呼称

被控訴人(原審第一事件被告)

氏名又は名称

株式会社三靖

住所又は居所

東京都千代田区岩本町二丁目一三番七号

呼称

被控訴人(原審第二事件被告)

氏名又は名称

ポライト産業株式会社

住所又は居所

東京都台東区根岸二丁目二番四号

呼称

被控訴人(原審第三事件被告)

氏名又は名称

株式会社エスタ

住所又は居所

東京都町田市金森一一三六番地

代理人弁護士

手塚敏夫

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人昭和有機株式会社(以下「被控訴人昭和有機」という。)、同株式会社三靖(以下「被控訴人三靖」という。)及び同ポライト産業株式会社(以下「被控訴人ポライト産業」という。)は、原判決別紙一の表示を使用し、又はこれを使用したフライパンを販売してはならない。

3  被控訴人昭和有機、同三靖及び同ポライト産業は、原判決別紙一の宣伝広告文を使用してはならない。

4  被控訴人昭和有機、同三靖及び同ポライト産業は各自、控訴人に対し、金四六万二〇〇〇円を支払え。

5  被控訴人昭和有機及び同三靖は、原判決別紙二のパンフレットを頒布してはならない(当審における請求の減縮)。

6  被控訴人株式会社エスタ(以下「被控訴人エスタ」という。)は、原判決別紙三の商品取扱説明書を頒布してはならない(当審における請求の減縮)。

7  被控訴人エスタは、控訴人に対し、金一〇万円を支払え。

8  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

主文同旨

なお、原判決は控訴人の第一ないし第三事件の各請求をいずれも棄却したが、控訴人は、原審第一事件被告株式会社ジエイオーデイ(以下、「原審共同被告ジエイオーデイ」という。)に対しては控訴しておらず、原判決中同被告に係る部分は確定した。

但し、当事者の略称は、本判決中原判決引用部分では原判決のままとし、その他の略称は、原判決のそれによる。

第二  事案の概要

一  事実関係(原告商品の販売、被控訴人らの行為)

原判決六頁六行目から一一頁末行までに記載のとおりであるから、これを引用する(但し、九頁二行目の「同第三の三」を「後記第三の三【原審共同被告ジエイオーデイの主張】1(2)」と改め、一〇頁三行目の「甲第九号証」の次に「。同号証が被控訴人昭和有機作成のパンフレット〔商品取扱説明書〕であることは、当事者間に争いがない。」を加え、末行の「後記第三の三2」を「後記第三の三【原審共同被告ジエイオーデイの主張】2」と改める。)。

なお、被控訴人らは、当審において、原審共同被告ジエイオーデイの原審における主張を援用しているので、同被告の主張はその限りにおいて引用するものである(以下同じ)。

二  当審における審理の対象

原審における控訴人の請求は、原判決一二頁二行目から一五頁五行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

但し、前示のとおり、右請求中原審共同被告ジエイオーデイに係る部分は、当審の審理の対象ではない。

また、控訴人は、当審において、別紙五のパンフレットの著作権侵害を理由とする別紙二のパンフレット(対被控訴人昭和有機、同三靖関係)及び同三の商品取扱説明書(対被控訴人エスタ関係)の使用、頒布の差止請求を頒布の差止請求に減縮した(当審における請求の減縮)。

三  争点

原判決一五頁七行目から一六頁六行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

第三  争点に関する当事者の主張

原判決一六頁八行目から四六頁一〇行目までに記載のとおりであるから、これを引用する(但し、三三頁一〇行目の「丙第一〇号証」の次に「の1、2」を加える。)。

第四  当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人の被控訴人らに対する各請求(但し、当審における請求減縮後のもの)はいずれも理由がなく、これを棄却すべきものと判断する。その理由(控訴人の当審主張〔補充主張〕に対する判断を含む)は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決四七頁一行目から八二頁九行目までに示されているとおりであるから、これを引用する。

一  争点1(一)(別紙四の1・2の表示は、控訴人の商品表示に該当し、かつ、周知性を取得しているか)及び同(二)(別紙一の表示は、別紙四の1・2の表示と同一又は類似のものであり、「ミラクルパン」と原告商品との混同を生じさせているか)について

1  原判決の訂正等

五六頁末行の「右表示」から五七頁五行目末尾までを「控訴人の本訴請求のうち別紙四の1の表示が商品表示に該当することを前提として、被控訴人昭和有機、同三靖及び同ポライト産業に対し、それぞれ別紙一の表示の使用等の差止め及び損害賠償を求める請求は、前提を欠き、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。」と改める。

2  控訴人の当審主張〔補充主張〕に対する判断

(一) 控訴人は、当審において、

「(1)不正競争防止法二条一項一号にいう商品表示は、▲1▼統一性すなわち消費者が一定の商品表示として認識できるものでなければならず、▲2▼独立性すなわちその商品表示自体によって、ある商品と他の商品とを区別できるものでなければならないが、それが商標であるか商品の容器であるかなど、商品個別化の手段は問わない。

(2)そうだとすれば、別紙四の1の表示が原判決のいう『種々雑多な構成要素からなるもの』(原判決の事実及び理由中第四の一1(一)(1)ないし(4)―原判決四八頁五行目から五〇頁末行まで・五五頁三行目の『(1)』から九行目の『等』まで―)であっても、そのことと『全体的一体性ないし統一性』を有する、消費者に対して一定の商品表示として認識可能なものであることとは何ら矛盾するものではない。すなわち、別紙四の1の表示が『メルシー』の平成七年三月一二日号に掲載され、他の六回の広告(乙第三号証の1ないし6)はこれと大同小異であるということは、右表示が『全体的一体性ないし統一性』を有する何よりの証左である。また、別紙四の1の表示が『種々雑多な構成要素からなるもの』であっても、そのことの故に右表示の『独立性』を否定する根拠とはならない。

(3)そして、原判決のいう『種々雑多な構成要素』が『商品の機能、効用の説明』であっても、それがセカンダリー・ミーニング(第二次的意味)を獲得していれば、それは不正競争防止法二条一項一号にいう商品表示に該当するところ、仮に、控訴人が『別紙四の1の基本的構成要素として主張する点』(原判決五九頁七行目冒頭から六〇頁二行目の『点』まで)の一つ一つが『格別特徴的なものとはいえない』としても、それらを組み合せた総体としての別紙四の1の表示が原告商品と他の商品とを個別化しているから、別紙四の1の表示が商品表示性を有することは否定できない。」と主張(補充主張)する。

(二) しかしながら、既に説示したところからも明らかなように、控訴人が「別紙四の1の基本的構成要素として主張する点」(原判決の事実及び理由中第三の一【原告の主張】1(一)(1)ないし(5)―原判決一七頁一〇行目から一八頁末行まで―)の一つ一つは、いずれも消費者に対し商品の機能、効用を説明するに止まり、しかも、種々雑多で格別特徴的なもの(特別顕著性を有するもの)とはいえないから、たとえこれらを総体的に見たとしても、右基本的構成要素の一つ一つが本来有するところの商品説明としての意味(第一次的意味)を超えて、これら全体が一体化して自他商品を区別、すなわち商品を個別化する商標的意味(第二次的意味)を持つに至っているとは認められない。したがって、控訴人の右主張は採用できない。

二  争点2(別紙一の表示は、品質誤認表示に当たるか)について

1  原判決の訂正等

(一) 六四頁二行目の「判定していることが認められる。」を「判定しており、前記丙第一四号証には、琺瑯の中にセラミックコーティングも含まれる趣旨の記載がある。」と改める。

(二) 六八頁九行目の「丙第一七号証」を「丙第一七、一八号証」と改め、末行の「プライマーコーティング」の次に「(下塗加工)」を、同じく「中間塗り」の次に「(フッ素加工)」を、末行から六九頁一行目にかけての「トップコーティング」の次に「(上層塗り)」を各加える。

(三) 六九頁八行目の「以上」から七〇頁二行目末尾までを次のとおりに改める。

「以上のとおり、別紙一の表示は、控訴人主張の三点においていずれも品質誤認表示に当たるとはいえないから、控訴人の本訴請求のうち別紙一の表示が品質誤認表示に該当することを理由に、被控訴人昭和有機、同三靖及び同ポライト産業に対し、それぞれ別紙一の表示の使用等の差止め及び損害賠償を求める請求は理由がない。」

2  控訴人の当審主張(補充主張)に対する判断

(一) 控訴人は、当審において、「被控訴人ら提出の丙第一七号証に記載された方法によって、直径二八cmである『ミラクルパン』の内面(フッ素樹脂コーティング)が五層を形成するためには、まずプライマーコーティングをして焼成し、次に中間塗りを行って焼成し、もう一度中間塗りを行って焼成し、更にトップコーティングを行って焼成し、最後にもう一度トップコーティングを行って焼成しなければならない。しかるところ、甲第二九号証(大阪市立工業研究所による分析結果)によれば、『ミラクルパン』の内面にある樹脂塗装膜の膜厚は、代表的な部分で九ないし一四μmであり、最も薄い部分では二ないし三μm程度であって、そもそも五層の塗膜が存在する厚さではないから、『内面:フッ素樹脂加工コーティング(五層)』の表示は明らかに品質誤認表示である。」と主張(補充主張)する。

(二) しかしながら、丙第一〇号証の1、2(財団法人日本文化用品安全試験所作成の試験成績報告書)によれば、直径二八cmである「ミラクルパン」の膜厚は二二・八ないし二九・二μm(試料五個の平均値は二五・八μm)であるとの試験結果が出ており、既に(原判決六八頁九行目の「丙第一七」から六九頁三行目の「ある」までに)説示したとおり、「ミラクルパン」の製造元が中間のフッ素と上層のトップコートを各二回行っていることが認められることに照らすと、右甲第二九号証の分析結果から直ちに「ミラクルパン」の内面(フッ素樹脂コーティング)に五層の塗膜が形成されていないとはいえず、控訴人の右主張はたやすく採用できない。

三  争点3(一)(別紙四の1・2の表示は著作物ということができ、別紙一の表示は別紙四の1・2の表示についての控訴人の著作権を侵害するものであるか)及び同(二)(別紙五のパンフレットは著作物ということができ、別紙二のパンフレット又は別紙三の商品取扱説明書は別紙五のパンフレットについての控訴人の著作権を侵害するものであるか)について

1  原判決の訂正等

(一) 七二頁五行目の「ジャンボに」の次に「焼ける」を加え、九行目の「特徴」を「特長」と改める。

(二) 七七頁七行目冒頭から七八頁一行目末尾までを次のとおりに改める。「したがって、控訴人の本訴請求のうち別紙一の表示が別紙四の1・2の表示についての控訴人の著作権を侵害するものであることを理由に、被控訴人昭和有機、同三靖及び同ポライト産業に対し、それぞれ別紙一の表示(宣伝広告文)の使用の差止めを求める請求は理由がない。」

(三) 八二頁三行目冒頭から九行目末尾までを次のとおりに改める。

「してみれば(後記控訴人の当審主張〔補充主張〕に対する判断(二)(2)で検討したところを含む)、控訴人の本訴請求のうち別紙五のパンフレットについての著作権侵害を理由に、被控訴人昭和有機、同三靖に対し、別紙二のパンフレットの頒布の差止めを、同エスタに対し別紙三の商品取扱説明書の頒布の差止め及び損害賠償を求める請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。」

2  控訴人の当審主張(補充主張)に対する判断

(一) 控訴人は、当審において、

「(一)著作権法二条一項一号の『創作的に表現したもの』との文言の意味するところは、厳格な意味での独創性があるとか他に類例がないとかが要求されているわけではなく、著作者の個性が何らかの形で現われていれば足りるのである。なぜなら、どのような作品であっても、常に先人の文化的遺産のうえに成り立っているのであるから、作者独自のものであるといっても、他に類例がないとか全く独創的であるという程度にまで独自性が要求されるものではない。要するに、創作とは模倣でないことを意味するものと解すべきであり、作者が一定の事象を認識し、それを作者が自己の感性・これまでの経験・獲得した知識等に依拠し、自己の固有の精神作業に基づいて言語等を使用して外部的に表現したものであるならば、それは作者独自の思想表現であり、著作物といえるのである。

(2)そうだとすれば、別紙四の1・2の表示もその意味において著作物であり、それが広告用に作成されたものであることをもって、その著作物性が否定されるものではない。

(3)別紙五のパンフレット(商品取扱説明書)の題名(▲1▼の題名)である『フシギな、不思議な料理ブック 水なし 油なし』との表現は、右パンフレットを手にした消費者に対し、原告商品『ニューディナーパン』の特性を端的にアピールし、これを印象づけ、同商品を消費者に愛好してもらうためにはいかなる表現が適切かを思考した結果創作されたものである。すなわち、右表現は、そこに使用されている言葉の一つ一つには独創性はないものの、右目的を達成するためにそれらの言葉をどのように組み合せて表現するかという点において、著作者独自の精神活動が存在しているものであるから、題名ないしキャッチフレーズという表現形式の故に、右表現(▲1▼の題名)の著作物性が否定されるものではない。また、別紙五のパンフレットの▲2▼ないし▲10▼の部分は、いずれも右原告商品を使用して料理を作るにあたり、同商品の特性を生かした調理方法をどのように表現すれば消費者によりよく理解してもらえるかということを思考した結果創作されたものであって、そこには著作者独自の精神活動が存在しているから、たとえ他祉製のフライパンの取扱説明書の極く一部分において右パンフレットと同じ言葉、あるいは類似の言葉が使用され、同様の表現がなされているとしても、そのことの故に右パンフレットの著作物性が否定されるものではない。さらに、右原告商品の使用上の注意及び手入れ方法を説明した、別紙五のパンフレットの▲11▼及び▲12▼の部分についても、右と同様のことがいえる。

しかるところ、別紙五のパンフレットと別紙二のパンフレット又は別紙三の商品取扱説明書を対比すると、別紙二のパンフレットに『かぼちゃ』の料理方法が、別紙三の商品取扱説明書に『かぼちゃ』及び『肉じゃが』の料理方法がそれぞれ記載されていることを除けば、その対象項目がほとんど同一であり、しかもその項目において同一ないし類似の表現が別紙二のパンフレット又は別紙三の商品取扱説明書のほとんどを占めているから、これらが別紙五のパンフレットを模倣・盗用したものであることは明らかである。」と主張(補充主張)する。

(二) (1)そこで検討するに、まず、著作物として、著作権法の保護を受ける対象は、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものでなければならないが、別紙四の1・2の表示は、既に(原判決四八頁五行目から五〇頁末行まで・七〇頁八行目から七三頁二行目までに)説示したとおり、「フシギな、不思議なニューディナーパン」、「水なし?」、「油なし!」とのキャッチフレーズと、水や油を加えなくても調理することが可能であるというフライパン「ニューディナーパン」の機能を読者(消費者)にアピールする説明文の付いた写真等で構成される商品広告であって、それが全体として、思想や感情を創作的に表現したものであるとはいまだ認め難い。

ところで、編集著作物とは、創作的に素材を選択、配列した編集物のことをいい、その編集対象物である素材自体は、必ずしも著作物である必要はなく、たとえ著作物ではない素材を対象とするものであっても、その素材を収集し、分類し、選別し、配列するという一連の行為に知的創作性のあるものを、著作権法で保護しようとするものであるが、実際に保護の対象となるのは、抽象的な編集方法というアイデア自体ではなく、あくまでも具体的な編集物に具体的に表現(具現化)された編集方法であるから、編集の対象物である素材がまったく異なる場合は編集著作権侵害の問題は起こらない。

しかるところ、別紙一の表示は、既に(原判決五一頁一〇行目から五三頁末行までに)説示したとおり、「ダイエット中の方におススメ!!」、「水なし!」、「油なし!」とのキャッチフレーズと、少しの水を加えるだけでゆでることができるとか、食材である肉に含まれる油を利用して調理することが可能で、しかも溶け出した脂肪分を捨てることができるとの説明文の付いた、ゆでたり焼いたりした食材が納まっているフライパン「ミラクルパン」の写真等で構成される商品広告であり、その構想、アイデア自体は、別紙四の1・2の表示のそれに類似していることは否定できない。しかしながら、既に(原判決七四頁五行目から七六頁一〇行目までに)説示したとおり、その構想、アイデアによって実際に「ミラクルパン」(被控訴人昭和有機、同三靖及び同ポライト産業の取扱商品)の広告として具現化された別紙一の表示を構成する各写真が、原告商品「ニューディナーパン」の広告として具現化された別紙四の1・2の表示における各写真とは別のものであり、また、商品説明文等の内容も異なるから、仮に、別紙四の1・2の表示に編集著作物性を認め得るとしても、別紙一の表示は、編集著作物としての別紙四の1・2についての著作権を侵害するものとはいえない。

(2)次に、別紙五のパンフレットは、「ニューディナーパン フシギな、不思議な料理ブック 水なし 油なし」との表題が付いた表紙部分、「焼く料理」方法についての概括的説明、「ゆでる・煮る料理」方法についての概括的説明、「ゆでる・煮る料理」の具体的説明としてのゆで卵・野菜(ふき・葉菜類・枝豆)・ふきの卵とじ、アスパラガスのゴマ酢和え・五目煮・めん類、「焼く料理」の具体的説明としてのホットケーキ・鶏肉のソテー(野菜添え)・ハンバーグステーキ・ビーフステーキ・焼き餃子・お好み焼き・あじの塩焼き、「妙める料理」の具体的説明としての妙飯・焼きそば・もやしとニラの妙め物・なすの妙め煮、「揚げ料理」の具体的説明としての南蛮漬け、商品の使用上の注意と手入れの方法に関する説明文と写真・挿し絵とからなる商品取扱説明書であり、原告商品「ニューディナーパン」を使用した多数の調理方法やこれを使用する上で注意すべき点等を説明するものであるが、そのうち、控訴人が本件において具体的に、別紙二のパンフレット又は別紙三の商品取扱説明書による著作権侵害を主張する別紙五のパンフレットの箇所、すなわち別紙比較一覧表1又は2の左欄摘示部分は、既に(原判決七八頁末行から八二頁二行目までに)説示したとおり、前記表題を含め、著作権法が保護の対象としている思想や感情の創作的表現であるとはいまだ認めるに足りないものである。

もっとも、別紙二のパンフレットは、「不思議なベ ミラクルパン」、「不思議で便利な 料理ガイド 水・油なし」との表題が付いた表紙部分、焼く料理についての概括的説明、ゆでる料理・煮る料理についての概括的説明、焼く料理の具体的説明としてのホットケーキ・鶏肉・餃子、ゆでる料理の具体的説明としてのゆで卵・枝豆・ほうれん草・かぼちゃ・五目煮、野菜をゆでるポイント、商品の手入れ方法及び使用上の注意に関する説明文と挿し絵とからなる商品取扱説明書(被控訴人昭和有機、同三靖及び同ポライト産業関係)であり、また、別紙三の商品取扱説明書は、「ヘルシー調理なべ」、「不思議で便利な 料理ブック 水・油なし」との表題が付いた表紙部分、商品の使用上の注意、焼く料理についての概括的説明、ゆでる料理・煮る料理の概括的説明、焼く料理の具体的説明としての鶏肉・餃子、ゆでる料理の具体的説明としてのゆで卵・かぼちゃ・肉じゃが、野菜をゆでるポイント、商品の手入れの方法に関する説明文と挿し絵とからなる被控訴人エスタの商品取扱説明書である。このように、別紙二のパンフレット及び別紙三の商品取扱説明書は、いずれも被控訴人らの商品「ミラクルパン」を使用した調理方法やこれを使用する上で注意すべき点を説明するものであるが、別紙比較一覧表1、2に記載のとおり、それぞれの構成の仕方・編集方法や説明文において別紙五のパンフレットのそれと類似している点がないわけではない。しかしながら、被控訴人らの商品「ミラクルパン」の商品取扱説明書として具現化した別紙二のパンフレット又は別紙三の商品取扱説明書を構成する説明文付きの各挿し絵は、原告商品「ニューディナーパン」の商品取扱説明書として具現化した別紙五のパンフレットにおける各押し絵とはまったく別のものであり(したがって、別紙二のパンフレット又は別紙三の商品取扱説明書における各挿し絵は、別紙五のパンフレットにおいて著作物として認められる余地のある各挿し絵についての著作権を侵害するものではない。)、また、別紙二のパンフレット又は別紙三の商品取扱説明書には、別紙五のパンフレットを構成するような写真が存在しないことは明らかであるから、仮に、別紙五のパンフレットに編集著作物性を認める余地があるとしても、別紙二のパンフレット又は別紙三の商品取扱説明書は、これを侵害するものとはいえない。

(3)したがって、別紙四の1・2の表示及び別紙五のパンフレットの著作権侵害に関する控訴人の右主張は採用できない。

第五  結論

以上の次第で、本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林茂雄 裁判官 小原卓雄 裁判官 長井浩一)

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